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1. 低空飛行の我が心

あ、と思う間もなく、三蔵は斜面を滑り落ち、かなりの衝撃とともに地面に打ちつけられた。
だが、勢いはそれだけでは殺されず、そのまま転がってようやく止まる。体の痛みをおして素早く起き上がると、銃を構えて辺りを窺った。
しん、とした空気が流れている。
自分のほかに、動く気配はない。

それでもなにが起こっても良いように身構えて、慎重に周囲を見渡すと、三蔵と一緒に斜面を滑り落ちていった妖怪が斜面のすぐ下に倒れているのが見えた。
近づかなくても、おかしな方向に曲がった首からすでに事切れているのはわかった。
三蔵は肩の力を抜くと、構えた銃を下した。それから、斜面の上を見上げる。
かなり距離があるうえに、足掛かりになりそうなものがない。登っていくのは無理そうだ。となると――と、改めて周囲を見渡す。
いまいる周辺は少し開けているが、後は木々が密集していて見通しが悪く、どっちの方向に進んだらよいかは判断に迷うところだ。

三蔵は溜息をつき、とりあえず銃を懐にしまって地面に座り込む。
斜面を滑り落ちる前は、妖怪たちと乱闘になっていたので、体力的にそろそろ限界だった。
というか乱闘の最中に、倒した妖怪に巻き込まれて斜面を滑り落ちた、というのが正しい。
失われた経文の情報をもとに旅をしていたのだが、その帰路で妖怪に襲われた。
よくあることだ。

――経文の行方も掴めなかったことも。

ギリッと歯を食いしばり、三蔵は拳を地面に打ちつける。
何度、こんなことを繰り返せば、と思う。
体が傷つくのは――命を危険に晒すのは構わない。それだけのことをしても見つけ出さねばならぬものなのだから。
だが、こうも見つからないと――……。

「三蔵っ!」

と、突然、上から声が降ってきた。
顔をあげたときにはもう、悟空が斜面を転がり落ちるようにして、走ってくるのが見えた。
危ない、と注意する間も、そこにいろ、と命じる間もない。

「三蔵っ」

そして次の瞬間には、もう目の前に迫っている。すごい勢いで飛びついてくる、と認識するよりも早く、勢いで地面に押し倒された。

「三蔵、三蔵、三蔵っ」

ただただ、悟空はその名だけを連呼する。
それだけしか、ないように。
――いや、たぶん本当に、いま考えているのはそれだけなのだろう。

「煩ぇっ」

三蔵は懐からハリセンを取り出すと、身を起こすついでに悟空の頭をはたいた。

「いてっ。いきなりなにすんだよ」

悟空は頭を押さえると、半分泣き顔のまま、唇を尖らせる。

「いきなりはこっちの台詞だ。ったく、なんでこっちにくるんだよ」

「だって、三蔵、突然消えるし。びっくりしたんだぞ」

「それにしたって、ちゃんと状況を見極めてから行動しろよ。二人とも山道を外れてどうすんだよ」

言われて、悟空はキョロキョロと辺りを見回し、それから斜面を見上げる。三蔵と同じく、ここから登っていくのは困難という結論に達したらしい。小首を傾げて、口を開く。

「んー。ま、とりあえず下ってけば、麓につけるんじゃね?」

「いい加減だな」

だが、それしかあるまい。立ち上がろうとしたところ、悟空が身軽に先に立ち上がって手を差し伸べてきた。

「いらん」

それを無視して三蔵は立ち上がる。
ぶぅっとまたもや唇を尖らせて、悟空は三蔵の腕にしがみつく。

「歩きにくいだろうが」


「いいじゃんか。こっち。道じゃねぇけど、しばらくそんなに急じゃねぇし」

悟空に引っ張られるように、三蔵は歩き出す。
一緒に歩けるのが嬉しいのか、悟空は上機嫌で、鼻歌まで歌い出しそうな雰囲気だ。

「……相変わらず煩ぇヤツ」

小さく、三蔵は呟く。

「ん? なんか言ったか」

「なんでもねぇよ」

いつでも煩く己を呼ぶ声。
落ち込んでいる暇もないくらいに――。
それがあれば、また一歩。
三蔵は頭をあげ、山道を歩いていった。


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お題提供元:深海ノ魚さま(曇り空の下で3題)